幸せな時代はずっとは続かなかったのでした。
1960年代、アメリカでは公民権運動と長期化してきたベトナム戦争にたいする反戦運動で激しい時代を迎え、楽しいだけでは済まないということに多くの人々が気がついてしまったわけです。特にベトナム戦争では多くの人的犠牲もあり、後の1970年代まで映画や音楽においてアメリカにとって大きな挫折となった戦争をテーマにするものが創られました。
Jazzにおいても激動の時代は1960年代初頭あたりから始まったとみるのが妥当ではないかと思います。1950年代最後のあたりから始まったモードとフリーへの流れがそれなんですけれど、言葉で書いてあるのを見てもいまひとつ意味が分かりませんし正直な話、そんなの詳しく知らなくてもいいんじゃないかと思います。音楽理論とか知っていれば、聴くときに別の切り口が見える可能性もありますけれど、そうでなければ楽しめないっていうのは間違っていると思うんですね。丁度この頃から音楽のビジネスにおいてはロックやその他のポピュラーな作品がセールスを伸ばすようになって、ジャズは徐々にレコードがそれほど多く売れないジャンルになって来ていました。
いいものを生み出してもミュージシャンの生活が苦しいままなんてことが当たり前になって、1960年代後半から1970年代には電子楽器の採用やイージーリスニングへの流れが出てきます。まあ、大衆路線が全てダメという話ではないのですが、買ってまで聴きたくないものも出て来たのですね。聴く側もその辺のバランス感覚が難しいところで、アバンギャルドなものがわかったフリをするのがカッコいいと勘違いさせる評論家なんかが出て来たり、ともかくカッコつけたがるわけです。そんなことを踏まえつつもまだ比較的気楽な1960年代前半の作品から3枚いきましょう。


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Horace Silver/Tokyo Blues
アート・ブレイキーとともにファンキー・ジャズといえばこの人、ホレス・シルヴァーは絶対にはずせません。エキゾチックな名曲を沢山生み出したことでも有名で、ピアニストとしてよりも作曲家として評価されているように思います。このアルバムは演奏の為に来日したときの印象をもとに吹き込まれたもので、ジャケット写真の妙なファンキーさに日本人にはかえって手が伸びなくなりそうですが、音は日本的なものではなくてラテンタッチを上手く生かした佳曲が揃っています。(1962年)

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Domino/Roland Kirk

ローランド・カークは巨漢で迫力がありながら盲目であること、リード楽器を複数同時に演奏することからどうしてもキワモノ扱いされてしまっている人。ワタシも最近になって初めてきちんと聴いたのですが、これがまた難解な部分なんてまるっきりなくて、ひたすら楽しいサウンドにびっくりします。なんでこのアルバムを後回しにしてしまっていたんだろうとやや後悔しているほどです。ポップで耳障りのいい部分も沢山持っていて、はじめてJazzに触れる人にも安心して薦められる痛快な作品。(1962年)

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I Just Dropped By To Say Hello/Johnny Hartman

ジョニー・ハートマンといえばコルトレーンとの共演作、
John Coltrane & Johnny Hartmanがあまりにも有名ですのでそれを紹介すればいいのでしょうが、あえて今回はこのアルバムを登場させましょう。ソフトな歌い方をする人で紹介文には必ず「クルーナー唱法」という言葉が使われます。どういうことかちょこっと調べてみると「ささやくように歌う」というような歌い方らしいです、男性のジャズボーカルはソフトな歌い方が人気があるように思いますが、特にこのアルバムは夜に聴くのにピッタリ、いわゆる酒がすすむ一枚というやつです。(1963年)
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